「きく」から生みだす社員インタビュー記事
日本語って複雑で難しいですよね。
たとえば、「きく」ということば。
「聞く・聴く・訊く」
意味は違えど発音は同じ。
発音は同じでも意味が違うのだから、ことばの意味を理解しておかなければなりません。
では、一体どれほどの人が上記3つの「きく」ということばを理解し、意識して使い分けているのでしょうか。
たとえばウェブサイトの採用コンテンツに社員インタビューというものがあります。
インタビュー(取材)なので、相手に話を「きく」ことになります。
このとき取材者は「きく」をどのように使い分けているのでしょうか。
どのようなことを意識すれば、実りあるインタビューになるのでしょうか。
わたし自身、採用サイト制作において何度もインタビューをさせていただいています。
そのことも踏まえた上で、質の高い社員インタビュー記事を生み出すための、考え方についてお話をしたいと思います。
3つの「きく」を定義する
採用コンテンツの一つである社員インタビュー。
社員インタビューとは、この会社にはどんな人が働いていて、どんな仕事をしているのかなどを求職者に知ってもらうために、現役社員の方々にお話をしてもらうコンテンツです。
基本的には1対1で取材を進めていくのですが、聴き手である取材者の進行次第で、インタビューが成功するかどうか大きく変わってきます。
そして、この成功の分かれ目に冒頭で紹介した「きく」が深く関係します。
どのように関係するのか。
ここで、3つの「きく」ということばを定義してみましょう。
まずひとつめは「聞く」。
犬の遠吠えを聞く、鳥の鳴き声を聞くなど、受動的・受け身の状態で聞くことを意味します。
続いてふたつめは「聴く」。
音楽を聴く、ラジオを聴くなど、能動的・自分から聴くことを意味します。
そして最後は「訊く」。
道を訊く、分からないことを訊くなど、質問をしたり、たずねたりすることを意味します。
このように3つの「きく」を定義すると、社員インタビューでは「聴く」と「訊く」が重要になってきます。
なぜなら、話し手の話に耳を傾けて聴かなければ、話の内容やことばが理解できなくなってしまいます。
話し手に気持ちよく話をしてもらうためにも、聴き手がしっかりと話を「聴く」ことが必要です。
また、話し手に訊くべきことを訊かなければ、インタビューの意味を失い、コンテンツが成立しなくなります。
何をどう語ってもらえれば、話し手の人柄や雰囲気が求職者に伝わるのかを考えながら「訊く」必要があります。
いい取材現場にするためには、自分の中で「聴く」と「訊く」を定義し、意識しながらインタビューを進めていくことが大事です。
相手が話したくなるようにきく
話し手の話に耳を傾けて聴くこと、話し手に訊くべきことを訊かなければならないことの重要性をお話しました。
そして、ここからさらに踏み込んでいかなければならないことが、「訊き方」です。
取材者は時として自分が訊きたいことに集中しすぎて、誘導尋問のようになってしまう恐れがあります。頭の中にずっと訊きたいことが浮かんでいて、その答えを求めて自分の都合のいいように話を誘導してしまう。
あのことばを引き出したい、こう発言してほしい、などといった狙いがあるからだと思っています。
しかし、です。
はたして、取材者は自分の訊きたいことを訊ければそれでいいのでしょうか?
話し手のことを考えずに自分がほしいことばを手にすればいいのでしょうか?
もちろん求職者を代表して訊かなければならないことはあると思います。
とはいえ、自分の都合に合わせた進め方や訊き方は、NGです。
ここであらためて社員インタビューの構図を整理します。
話し手は社員の方、聴き手は取材者です。
取材者は事前に用意した質問リストに沿いながらインタビューを進めていくことになります。
入社したきっかけはなんですか?
〇〇がきっかけです。
どんなお仕事をされていますか?
〇〇をしています。
どういったときに仕事のやりがいを感じますか?
〇〇のときにやりがいを感じます。
わかりやすくするために一問一答にしていますが、実際には一つひとつ話を膨らましていきます。
この構図をみると、基本的に話し手は取材者に「訊かれたことだけ」に答えているのであり、「自分の話したいこと」を話しているわけではありません。
もう一度言います。
話し手は取材者に「訊かれたことだけ」に答え、「自分の話したいこと」を話しているわけではない。
そう。
話し手は「自分の話したいこと」を話していないんです。
とすれば、面接のように一方的に質問を投げかけて、訊きたいことだけを訊こうとするのは、話し手のことが見えておらず自分のことしか考えていないことになります。
社員インタビューのゴールは、話し手に素直に自分の思いや考えを話してもらい、人としての在り方や親しみを持ってもらうことです。
さらに言うと、お互いが意図していない、いい「ことば」が出たときこそインタビューの成功だと言えます。
「訊かれたことだけ」に答えてもらっているようでは、話し手の人物像を伝えるのは難しいように思います。
話し手の頭の中にある、ことばにできない何かを言語化できるように会話を重ね、相手が自ら話したくなるような場の空気をつくることこそが、取材者の役目ではないでしょうか。
社員インタビューは話し手と聴き手が初対面のことがほとんどのため、緊張感もあり、どことなくぎこちない感じもあります。それでも取材者が場の空気や相手の気持ちを考えながら進行していくことで、お互いにとっていい取材現場になり、おもしろくて質の高い社員インタビュー記事ができあがるのではないかと考えています。
話し手が自ら話をしたくなるような場の空気を、いかにしてつくり出せるかが鍵になります。
おわり
ここまで、3つの「きく」の中から、「聴く」と「訊く」についてお話をしてきました。
結局のところ、インタビュー(取材)は人をみることなんじゃないかなと思ったりしています。
デッドボールのような質問を投げかけて相手を嫌な気持ちにさせたり、取材者側の都合のいいように誘導尋問したりするのではなく、ただただ純粋にこの人はどんな人なんだろう、なぜこのような考えを持っているんだろう、どうしてこんなことばを選んだんだろうなどと、相手に興味を持つことでコンテンツの質もかなり変わってくる気がしています。
決して面接のような場にせず、自然で和やかな雰囲気をつくりだして、話し手に自分の想いや考えを語ってもらえたらいいなと思っています。
採用サイトでは先輩社員の方のメッセージやインタビューは人気コンテンツのひとつかと思います。
どんな人がいるんだろう、どんな人と一緒に働くことになるんだろうと、求職者は心の中で思いながらメッセージやインタビューを読んでいるはずです。
先輩社員の人柄をありのままに伝え、求職者の心に響くようなインタビュー記事を作成していければと思います。
自社の社員をインタビューしてほしいという方はぜひご相談ください。