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【2026年版】HTMLは「アクセシビリティ」で差がつく!義務化時代に備えるセマンティックマークアップ完全ガイド

2026.02.09 : Yamamoto Naoki
Coding

「デザイン通りに表示されているから、HTMLのタグなんて何を使っても同じ」
もし今、あなたがそう思っているとしたら、少しだけ手を止めてください。

結論からお伝えすると、2026年現在のWeb開発において、その考え方は極めて危険です。なぜなら、不適切なタグ選びは、特定のユーザーがサイトを利用できない「デジタルの壁」を生むだけでなく、検索エンジン(SEO)からの評価を著しく下げ、法的リスクさえ招く原因になるからです。

この記事では、コーディング初心者から中級者の方に向けて、明日から現場で確実に使える「アクセシビリティに配慮したHTMLの書き方」を徹底解説します。

まずは、今回のキーワードである「アクセシビリティ」について、正しく理解することから始めましょう。

そもそも「アクセシビリティ」とは?

「アクセシビリティ(Accessibility)」と聞くと、「障害者のための特別な対応」だと思っていませんか?

実は、それは大きな誤解です。
アクセシビリティとは、直訳すると「アクセスのしやすさ」「近づきやすさ」という意味。

Webにおけるアクセシビリティとは、「高齢者や障害者を含むすべての人が、どんな環境でも支障なく情報にアクセスし、利用できること」を指します。

「自分には関係ない」は大間違い!

以下のシチュエーションを想像してみてください。

  • 「骨折して利き手が使えない」(一時的な身体的制約)
  • 「外出中、日差しが強すぎてスマホの画面が見にくい」(環境的制約)
  • 「動画を見たいけれど、電車内だから音が出せない」(状況的制約)
  • 「老眼が進んで、小さな文字が読みにくい」(加齢による変化)

これらすべてが「アクセシビリティ」の問題です。
つまり、アクセシビリティを高めることは、障害を持つ方への配慮であると同時に、「未来のあなた自身」や「あらゆる状況下のユーザー」にとって使いやすいサイトを作ることなのです。

そして、そのための最も基本的かつ強力な方法こそが、今回解説する「セマンティックマークアップ(※1)」です。特別なツールは必要ありません。HTMLのタグを正しく使うだけで、サイトの品質は劇的に向上します。

1.なぜ今、セマンティックなHTMLが「必須」なのか?

Web制作の現場で「セマンティック(意味論的)」という言葉が標準語となりました。これは単なるトレンドではなく、Webを取り巻く環境が激変したことへの適応です。

なぜ、見た目には変わらないタグの使い分けがこれほど重要視されるのか? その理由は大きく分けて3つあります。

① 法律と社会的責任(コンプライアンス)の変化

最大の要因は、法改正による社会的責任の重みが増したことです。

2024年に施行された改正障害者差別解消法により、行政機関だけでなく民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。Webサイトにおいてこれは、「目が見えない」「手が震えてマウスが使えない」といった方々でも、情報にアクセスでき、サービスを利用できる状態を指します。

2026年の現在、アクセシビリティに対応していないサイトは、コンプライアンス違反のリスクを抱えるだけでなく、ESG投資(※2)やSDGsの観点からも企業価値を下げる要因となります。

② SEO(検索順位)への決定的影響

Googleなどの検索エンジンは、人間のように目で画面を見ているわけではありません。HTMLの構造(ソースコード)を読み取って内容を理解しています。

正しいタグ(セマンティックマークアップ)を使うことは、クローラー(※3)に対して「ここが重要な見出し」「これがナビゲーション」「これが記事の本文」と正確な地図を渡すことと同義です。

Googleは長年、「ユーザー体験(UX)」をランキング要因として重視しています。アクセシビリティが高いサイトは、結果としてユーザビリティも高く、直帰率の低下や滞在時間の向上につながるため、SEOにおいて非常に有利に働きます。

③ 開発効率と保守性の向上(DX)

意外に見落とされがちですが、セマンティックなコードは開発者自身を助けます。

  • デバイス対応: ブラウザやOSの標準機能(リーダーモードなど)が正しく動作しやすくなります。
  • コードが読みやすい: divだらけのコードよりも、header main footerと書かれている方が、構造が一目瞭然です。
  • 属人化の防止: 誰が書いても同じ構造になるため、チーム開発や引き継ぎがスムーズになります。

2.【基礎編】div中毒から卒業しよう!主要タグの役割マップ

まずは、何でも<div>で囲ってしまう癖(divスープ)から卒業しましょう。HTML5には、各パーツの意味を定義する専用のタグが用意されています。

これらを適切に配置することで、スクリーンリーダー(※4)を使用するユーザーは「メインコンテンツまでジャンプする」といった操作が可能になります。

タグ名役割と意味使用シーンの例
<header>導入部・ナビゲーションサイトのロゴ、グローバルナビゲーション、検索バー
<nav>主要なナビゲーションページ内の主要リンク、パンくずリスト
<main>主要コンテンツページの核心となる内容(※1ページに1つのみ)
<section>一般的なセクション見出しを伴うひとかたまりの内容
<article>独立した記事ブログ記事、ニュース詳細、SNSの投稿
<aside>補足情報・サイドバー関連記事、広告、サイドメニュー
<footer>フッターコピーライト、連絡先、サイトマップ

解説:
迷ったときは「この要素を単体で切り取って、RSSリーダーで配信しても意味が通じるか?」と考えてみてください。通じるなら<article>、通じないなら<section><div>が適切です。

3.【実践】明日から変えられる!Before/Afterで学ぶマークアップ術

ここからは、実際のコードを見ながら「悪い例(Bad)」と「良い例(Good)」を比較していきましょう。初心者が陥りやすいポイントを厳選しました。

① ユーザーを迷わせない「ボタン」と「リンク」の使い分け

最も多く、そして致命的な間違いが「クリックできる要素」のマークアップです。

Before:意味を持たないタグの使用

見た目はCSSでボタンにしていても、ブラウザはこれを「ただの箱」としか認識しません。。

<div class="submit-btn" onclick="submitForm()">送信する</div>
    
<a href="#" onclick="openModal()">詳細を見る</a>

After:役割に応じたセマンティックな指定

適切なタグを使うだけで、マウスを使えないユーザーもキーボード操作が可能になります。

<button type="button" onclick="submitForm()">送信する</button>
<a href="/details">詳細ページへ移動</a>

解説:
<button>タグを使うと、自動的に以下の機能が付与されます。

セマンティクス: スクリーンリーダーが「ボタン、送信する」と読み上げる。

フォーカス可能: Tabキーで選択できる。

キー操作: EnterキーやSpaceキーで実行できる。

② 視覚障害者にも構造を伝える「見出し」のルール

見出しタグ(h1〜h6)は、文字サイズを調整するための装飾ツールではありません。文書の「目次」を作るための論理ツールです。

Before:デザイン優先の飛び級

「文字を小さくしたいから」という理由で、順序を無視していませんか?

<h1>サービス紹介</h1>
<h3>こだわりポイント</h3>
<div class="title-style">お問い合わせ</div>

After:論理的な階層構造

本の目次のように、入れ子構造を守ります。

<h1>サービス紹介</h1>

<section>
	<h2>私たちのこだわり</h2>
	<h3>素材への配慮</h3>
	<h3>職人の技術</h3>
</section>

<section>
	<h2>お問い合わせ</h2>
</section>

解説:
スクリーンリーダーのユーザーの多くは、「見出しジャンプ機能」を使ってページの内容をざっくり把握(スキミング)します。見出しのレベルがバラバラだと、ページの構造を正しく理解できません。見た目の調整は必ずCSSで行いましょう。

③ 入力しやすさを劇的に変える「フォーム」の関連付け

スマートフォンでの操作や、手の震えがある方にとって、ラジオボタンやチェックボックスの小さな「◯」「□」を正確にタップするのは至難の業です。

Before:テキストと入力欄がバラバラ

<input type="checkbox" name="agree"> 利用規約に同意する

After:labelタグでの紐付け

<input type="checkbox" id="agree_check" name="agree">
<label for="agree_check">利用規約に同意する</label>

<label>
	<input type="checkbox" name="agree" />
	利用規約に同意する
</label>

解説:
<label>タグとfor属性(※5)を使うことで、「利用規約に同意する」という文字をクリックしてもチェックが入るようになります。これによりクリック可能な有効面積(ヒットエリア)が大幅に広がり、ユーザビリティが劇的に向上します。

④ 画像の「意味」を伝えるalt属性

画像が表示されない場合や、視覚に障害がある方のために、画像には代替テキスト(alt属性※6)が必要です。しかし、何でも入れれば良いわけではありません。

Before:ファイル名や重複、無意味な記述

<img src="icon-01.png" alt="icon-01.png" />
<img src="photo.jpg" alt="画像" />
<h2><img src="logo.png" alt="" />株式会社サンプル</h2>

After:labelタグでの紐付け

<img
	src="graph-2025.png"
	alt="2025年の売上は前年比120%増の右肩上がりで推移"
/>

<img src="bg-pattern.png" alt="" />

<a href="home.html">
	<img src="logo.png" alt="ホームへ戻る" />
</a>

4.【中級編】WAI-ARIA(ウェイ・アリア)で補完する

HTMLタグだけでは表現しきれない動的な機能(タブ切り替え、モーダルウィンドウ、アコーディオンなど)を作る場合、WAI-ARIA(※7)という技術を使って補足情報を加えます。

ここでは、頻繁に使う2つだけ覚えておきましょう。

① aria-label:見た目にない名前をつける

「×」ボタンや、虫眼鏡アイコンの検索ボタンなど、テキストがない要素に名前を付けます。

<button type="button" aria-label="メニューを閉じる">
	<span class="icon-close"></span>
</button>

② aria-expanded:開いているか閉じているか伝える

アコーディオンメニューなどで、現在の状態を伝えます。

<button type="button" aria-expanded="false" aria-controls="menu-content">
	メニューを開く
</button>
<div id="menu-content" hidden>...メニューの中身...</div>

注意点:
WAI-ARIAは強力ですが、使いすぎは禁物です。「No ARIA is better than Bad ARIA(不適切なARIAより、ARIAなしの方がマシ)」という格言がある通り、まずは基本のHTMLタグで表現できないか検討することが最優先です。

5.公開前にチェック!アクセシビリティ改善リスト

コーディングが完了したら、納品や公開の前に以下の5つを必ずチェックしてください。これを行うだけで、あなたのコード品質は格段にあがります。

  1. [ ] キーボードだけで操作できるか?
    • マウスを触らず、Tabキーでリンクやボタンを順に移動し、Enterキーで実行できますか?
    • Shift + Tabキーで逆順に戻れますか?
  2. [ ] フォーカス(※8)位置が見えるか?
    • デザインのために outline: none; で青い枠線を消していませんか?
    • – 今どこを選択しているかわからない状態は、キーボードユーザーにとって「暗闇」と同じです。消す場合は、必ず代わりのスタイル(背景色変更など)を指定してください。
  3. [ ] 画像に「alt属性(※9)」が入っているか?
    • 画像が何を表しているか、説明文は入っていますか?(装飾用の画像は空のalt=””でOK)
  4. [ ] 色だけで情報を伝えていないか?
    • 「赤色の項目が必須です」という指示は、色覚特性(※9)のある方には伝わりません。
    • – 色だけでなく、文字やアイコン(*マークなど)でも情報を併記しましょう。
  5. [ ] 適切なコントラスト比(※10)があるか?
    • おしゃれな「薄いグレーの文字」は、高齢者や屋外でスマホを見る人には読めません。
    • – 背景色と文字色のコントラスト比は「4.5:1」以上(WCAG AA基準)を目指しましょう。
  6. ズームしても崩れないか?
    • ブラウザの機能で200%まで拡大しても、文字が重なったり、コンテンツが画面外に消えたりしませんか?

おすすめチェックツール

目視確認だけでなく、ツールを活用して効率化しましょう。

  • Google Chrome Lighthouse: デベロッパーツールに入っている標準機能。「Accessibility」のスコアを確認できます。
  • axe DevTools: より詳細な問題点を指摘してくれるChrome拡張機能。現場のデファクトスタンダードです。
  • NVDA(Windows) / VoiceOver(Mac): 実際にスクリーンリーダーを起動して、自分のサイトを聞いてみましょう。驚くような発見があるはずです。

まとめ:美しいコードは「優しさ」と「想像力」から生まれる

ここまで、義務化時代に備えるセマンティックマークアップについて解説してきました。

技術的なことを多く語りましたが、本質はシンプルです。
「画面の向こうには、自分とは違う環境、違う身体機能を持った人がいる」
この想像力を持てるかどうかが、アマチュアとプロフェッショナルの分かれ道です。

適切なタグを選ぶことは、そうした見えないユーザーへの「おもてなし」です。そしてその配慮は、巡り巡ってSEO評価の向上、メンテナンスコストの削減、法的リスクの回避という形で、あなた自身とクライアントに大きな利益をもたらします

一度にすべてを完璧にする必要はありません。まずは今日書くそのコードの<div>を一つ見直して、「これは本当にdivでいいのかな? buttonやsectionのほうが親切かな?」と自問自答することから始めてみてください。

その小さなこだわりが、Webをより開かれた、豊かな場所に変えていくのです。

専門用語解説

記事内で登場した専門用語の解説です。復習にお役立てください。

  • (※1)セマンティックマークアップ: HTMLタグが持つ本来の意味(見出し、段落、リスト、ボタンなど)に従って、文書構造を適切に記述する手法。
  • (※2)ESG投資: 財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮して企業を選別・投資すること。
  • (※3)クローラー: Googleなどの検索エンジンが、Webサイトの情報を収集・登録するためにインターネット上を巡回させているロボットプログラム。
  • (※4)スクリーンリーダー: 視覚障害者がPCやスマートフォンの画面情報を「合成音声」で読み上げたり、点字ディスプレイに出力したりして利用するための支援ソフトウェア。
  • (※5)for属性: フォーム部品の<label>タグに使用する属性。対になる<input>タグのidと同じ値を指定することで、ラベルと入力欄をプログラム的に紐付ける。
  • (※6)alt属性(オルト属性): <img>タグに使用する属性。画像の内容を説明する代替テキストを記述する。画像が表示されない時や、スクリーンリーダーでの読み上げ時に使用される。
  • (※7)WAI-ARIA(ウェイ・アリア): HTMLだけでは表現できない動的なWebコンテンツのアクセシビリティを補完するための技術仕様。W3Cが策定。
  • (※8)フォーカス / フォーカスリング: キーボード操作などで要素が選択されている状態のこと。通常、ブラウザ標準では青や黒の枠線(リング)が表示される。
  • (※9)色覚特性(色覚多様性): 一部の色の組み合わせを区別しにくい特性のこと。日本人男性の約20人に1人、女性の約500人に1人の割合で存在すると言われている。
  • (※10)コントラスト比: 文字色と背景色の明るさの差を表す数値。WCAG(Webコンテンツアクセシビリティガイドライン)では、通常の文字で「4.5:1」以上の比率を求めている。

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