ビジネスの成功へ導くウェブ戦略
ビジネスが成功しているウェブサイトとそうでないウェブサイトの違いはなんなのか。
このことを考えていたときに、ふと以前に読んだ本のことを思い出しました。それは、私の記事でも何度か紹介している古賀史健さんの著書「取材・執筆・推敲」で、以下の3つの要素がそろったときにおもしろいコンテンツ(原稿)になると書かれていました。
・構造の頑強性
・情報の希少性
・課題の鏡面性
これはウェブサイト制作にもあてはまるのではないかと。
おもしろいコンテンツ(原稿)とウェブサイトを同一視するのは無理があるとの見方もあるかもしれませんが、そもそもウェブサイトはコンテンツの集合体のため、コンテンツづくりにおいては通ずるものがあると思っています。
たとえば、おもしろいコンテンツ(原稿) であれば「本」がわかりやすいですね。
売れる本と売れない本。
本の売り上げは作家(著者)や出版社からするとビジネスの成功に関わる話です。
そういったことを踏まえたうえで、さきほどの3つの要素から見てとれるのは、ビジネスが成功しているウェブサイトは「戦略的に考えられた」ウェブサイトであるということです。
今回の記事では「ビジネスの成功へ導くウェブ戦略」をテーマに、「構造の頑強性・情報の希少性・課題の鏡面性」の3つの要素をベースにした、ウェブサイト制作の考え方のお話をしようと思います。このようにすれば必ず成功する、といった成功法則のようなものではありませんが、ビジネスが成功しているウェブサイトに共通していることをお伝えできればと思います。
構造の頑強性
まずはじめに「構造の頑強性」です。これはあらゆるものの「基礎」となる部分です。この基礎がしっかりしていることで、ウェブサイトやコンテンツ(原稿)は成り立ちます。
たとえば、高校野球をテーマにした漫画では、物語の中心となるのはチームとメンバーです。彼らが野球の練習をし、公式試合に出場し、甲子園での優勝を目指す、といった物語が基礎になります。これがもしメンバーもいない、練習もしない、試合もしないとなってしまったら物語は成り立ちません。
これをウェブサイトに置き換えた場合、基礎となるのがサイトマップです。
サイトマップとはウェブサイトの構成図のようなものです。コーポレートサイトであれば、サイトマップには企業情報や事業内容、お知らせ、お問い合わせなどが含まれます。コーポレートサイトはどのような会社で、なにをしているのかがわかるようにしなければならず、サイトにアクセスしたものの企業情報も事業内容もないという構造では、コーポレートサイトとは呼べなくなってしまいます。
お菓子でいうなら、「柿の種」の中にあられが入っていないようなものです。それはもはや柿の種とは呼べませんよね。
コーポレートサイトもその企業を適切に表現する構造(サイトマップ)でなければ、ウェブサイトとしての機能を果たすことはできないでしょう。
自分たちはどのような会社で、誰に何をどのように伝えたいのか、目的をしっかり定めることが大切です。
企業情報の整理や顧客定義、商品/サービスの価値定義、認知経路の整理など、ウェブサイトの役割を決め、細部にわたり考え抜かれたサイトマップが必要になります。
基礎となる「構造の頑強性」を考えることが、成功への第一歩です。
情報の希少性
次に「情報の希少性」です。さきほどの野球漫画でたとえると、登場人物やストーリーなどです。甲子園での優勝を目指す過程を色濃く描き、この漫画ならではのキャラクター設定や印象的なストーリーが必要になります。
ここでしか得られない価値を提供し、物語の世界に没入してもらうことで読者を魅了します。なんの特徴もないキャラクターだったり話が平凡だったり、どこかで読んだことがあるような物語だと読者は離れていってしまうでしょう。
これをウェブサイトに置き換えた場合、コンテンツが情報の希少性になります。コーポレートサイトであればその企業が持つ特長や魅力などを表したコンテンツが該当し、これらがユーザーにとっての価値を高めてくれます。
ユーザーはなにかモノやサービスを選ぶときに比較検討をおこないます。
いまではネットで簡単に他社と比較されるため、自分たちを選んでもらうには優位性を示さなければなりません。他社と同じようなコンテンツやありきたりなコンテンツをつくるのではなく、ユーザーに有益な情報をコンテンツにすることで差別化にもなり、選ばれる確率を高められるようになります。自分たちが持つ独自の情報を積極的に発信していければ、競争力強化にもつながっていきます。
サイトマップにも関わる話ですが、ときどき、お客さまから「自分たちの強みや魅力がわからない」という声を聞くことがあります。しかしながら、お客さまとお話をしていると、自分たちではあたりまえのことでもユーザーにとっては貴重なこと(情報)だったりします。このように、お客さま自身が気づいていない自社の強みや魅力を引き出し、それをコンテンツにしてユーザーに届けていくことがわたしたちの役目であると考えています。
一般的にはこうだけど、なぜ私たちはこのようにしているのかといった理由や、自社で働くメリットなどはその企業ならではの情報です。そういった部分をていねいに言語化すれば情報としての価値は高まります。
「情報の希少性」は他社との差別化にもなり、ビジネスの成功に大きく貢献します。
課題の鏡面性
最後に「課題の鏡面性」です。この部分は情報の希少性にも関連するかもしれません。ここでも野球漫画でのたとえになりますが、作者は作品を通じて読者になにかしらのメッセージを伝えようとしています。チーム内のトラブルや監督との対立、保護者の干渉、環境への不満など、読者が感情移入しやすい状況を描くことで「自分ごと」として物語を読んでもらえるようになります。
物語を通じて読者が共感も理解もできなければ、時間は埋められてもこころを満たすことはできないでしょう。
これをウェブサイトに置き換えた場合、ユーザーの共感や理解、問題解決につながるつくりでなければなりません。ユーザーは目的を持ってウェブサイトを訪れます。会社の概要や場所を知りたかったり、事業内容やサービスのことを知りたかったり、はたまたその会社で働いている人たちのことを知りたかったりなど、求める情報はさまざまです。
つまり、自分たちが発信している情報はユーザーのためになっているのか、ユーザーの共感や理解を得られるのか、問題を解決してあげられるのか、このことを意識してウェブサイトを制作しなければなりません。
たとえば、採用サイトを制作する際には「求職者目線」が重要とよく言われます。そんなことあたりまえだと思うかもしれませんが、この「求職者目線」を意識したコンテンツを制作することは思いのほか難しいんです。
それはなぜか。
博報堂のクリエイティブディレクター、嶋浩一郎さんはこのようにおっしゃっています。
「人は自分の欲望の5%ほどしか言語化できていない」
つまり、求職者に「あなたはどんな情報があればいいですか?」と質問したとして、相手から「○○があったらいいです」というふうに返ってきた答えは、実際にはその人の欲望の5%ほどしか表せていないというわけです。
でも、相手がほしいといっている情報を提供してよろこんでもらえるなら、それでいいのでは?と思うかもしれません。もちろん、相手が求めている情報を提供することは大事です。アンケート調査や求職者へのインタビューはコンテンツづくりにおいても重要な役割を果たします。
一方で、人というのは不思議なもので、顕在化している欲望を満たしてくれることよりも、言語化できていない欲望(モノやコト)が目の前に現れてくれるほうが、よろこびを感じると言われています。
「そうそう!それそれ!」「これがほしかったんだよね!」「自分にピッタリの記事じゃん」みたいに、潜在化されていた欲望が現れた瞬間に自分ごと化されるようになります。
コンテンツづくりにおいてもこのことが重要で、どれだけ先回りして相手の欲望を満たすことができるかを考え尽くす必要があります。なんとなくこういう情報があればユーザーはよろこんでくれるだろうという考えではなく、おそらくユーザーはこういう考えを持っていてこんな行動をするだろうから、こういう情報を用意してあげれば満足してもらえそうだ、といった仮説を立てることが大事になります。
言語化できていない残り95%の欲望を満たすコンテンツをつくれるかどうか。
「求職者目線/ユーザー目線」のコンテンツづくりの難しさの理由はここにあります。
「課題の鏡面性」を考えることが、ビジネスの成功を支えるでしょう。
おわり
構造の頑強性、情報の希少性、課題の鏡面性をもとにウェブサイト制作の在り方についてお話してきました。もちろん、これがすべてというわけではなく、ウェブサイトを制作するにあたってはコンセプトを決めたり、もっと細かく戦略を立てたりする必要があります。とはいえ、ウェブ戦略を考えるうえでのベースにはなるだろうし、ビジネスが成功しているウェブサイトはウェブ戦略がしっかりと考えられているといっても過言ではないでしょう。
戦略を考えるうえでの手法などは、企業・制作会社によって異なるかと思いますが、大枠としての考え方を持っていないと、そこから具体化をすることができず、ビジネスの成功からは遠ざかってしまうかもしれません。
ウェブサイトを制作する際には、自分たちのビジネスを理解してくれて、一緒になって考えてくれる制作会社にお願いするようにしましょう。
株式会社ナナサンでは、顧客理解と提案力で企業の個性を最大限に引き出します。制作・見積もりのご相談は無料にて承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。