魅力的なコンテンツをつくるための取材術
コーポレートサイトや採用サイトには、先輩社員の声を通じて会社の魅力を伝える先輩社員インタビューというコンテンツがあります。先輩社員に話を聞いて、その内容をまとめたものを掲載するものです。
わたしはウェブサイト制作の一環として、先輩社員への取材と原稿作成をおこなうことがあります。
というわけで、これまでに携わってきた案件の経験をもとに、この記事では取材にかける思いや工夫の仕方、先輩社員インタビューの制作方法についてみなさんにご紹介しようと思います。
自社で同様のコンテンツ制作を考えている方や、将来的にこのような取材をおこなう予定のあるみなさんに、ぜひ役立てていただきたいと思います。
なぜ取材をするのか
そもそも「なぜ取材をするのか?」「なぜ先輩社員にインタビューをするのか?」という問いから考えたいと思います。
先輩社員インタビューというコンテンツにおいて、先輩社員の情報を掲載するのであれば、取材などせずにアンケートに記入してもらった内容を掲載してもいいじゃないか、との考えもあるかもしれません。たしかに情報を掲載するだけであればこの方法でも問題はないでしょう。
しかし、ここでよく考えてみたいと思います。
アンケートの情報を掲載するだけで、先輩社員の人柄や会社の魅力はどこまで伝わるのでしょうか。
求職者にどれほどいい影響を与えられるのでしょうか。
アンケートの情報だけでよければ、時間を要してまで先輩社員インタビューというコンテンツをつくる必要はないはずです。にもかかわらず時間をかけて、ときにはお金もかけてコンテンツをつくっている。
なぜなのでしょうか。
その理由は、感情がみてとれない文字情報だけでは人のこころは動かせないからです。
この部分について、もう少していねいに説明します。
まず大前提として、文字には感情がありません。喜怒哀楽、といった一つひとつの文字にも感情はありません。
先輩社員インタビューは基本的に文字のみで構成されています(動画でのインタビューは別です)。
場合によっては先輩社員の写真も掲載することもありますね。それでも、コンテンツの核は文字情報のため、感情を持ち合わせない文字を並べただけでは、先輩社員の人柄や会社の魅力をうまく伝えることができません。
ではどうすれば文字情報を通じて感情を表現することができるのか。
それが「論理展開やストーリー」です。
ざっくりこんな感じです。
「わたしは今の仕事についてこう思っています。それは〇〇だからです。でも、この話にはちょっと理由があって。それは...」
みたいな感じで、少し極端ですが一つひとつの文字を組み合わせることで文字から「文章」にまで昇華し、論理を展開しながらストーリーをつくりあげ、話し手の感情を表現します。
このことはアンケートに記入された文字情報だけでは不十分だと思っています。
ある程度まとまりを持ったことばがなければ、論理展開もスムーズにいかず、ストーリーをつくりあげることは難しいからです。話の流れもぎこちなく、求職者(読者)からすると気持ちよく読み進めることも困難かと思います。
ずいぶんと前置きが長くなってしまいましたが、「なぜ取材をするのか?」「なぜ先輩社員にインタビューをするのか?」
この問いに対する答えは「人を描く」ためです。
つまるところ、求職者に対して先輩社員の人柄や会社の魅力を「伝わるようにする」ためです。
また、なぜ先輩社員にインタビューをするのか?ということをよく理解しておかなければ、実りある取材をすることができず、求職者が本当に知りたいことを伝えられなくなるおそれがあります。
そうなってしまうと、取材を受けた側も取材した側も、時間と労力だけを消費してしまい、求職者のためでも誰のためでもない、先輩社員インタビューというコンテンツが生まれてしまいます。
「いやー、たくさん話をしたなー」「おもしろかったねー」なんていう、内々の感想とは裏腹にふたを開けてみると中身のないコンテンツになるなんてことも。
この点については、後述する「なにを取材するのか」のところで、もう少し詳しくお話しようと思います。
「なぜ取材をするのか?」「なぜ先輩社員にインタビューをするのか?」
この問いから取材は始まると思っています。
なにを取材するのか
「なぜ取材をするのか?」を理解したあとに考えなくてはならないのが、「なにを取材するのか?」です。
媒体や記事のスペースによって、先輩社員に取材する内容はかわってくるかと思いますが、求職者のための情報を掲載するという目的はかわりません。
気をつけないといけないのは、「情報」ということばに囚われすぎて、一般的な自己紹介のような情報だけを掲載してしまうことです。
もちろん、入社のきっかけや仕事内容などの情報は必要です。必要最低限の情報はなくてはなりません。
さきほど、先輩社員への取材は「人を描く」ためにおこなうものであるとお伝えしました。
取材を通じて、その人の在り方や親しみを感じてもらう。
今の職場や仕事に対する思いをことばにしてもらう。
先輩社員への取材は情報収集のためにおこなうものではないのです。
では、具体的になにをどのように取材すればいいのか。
人を描くにはどのように取材すればいいのか。
その源泉となるのが「好奇心」です。
好奇心がなければ取材相手から魅力的な「なに」を引き出せないと思っています。
なぜなら、好奇心は観察する力を高めてくれるからです。
たとえば、小学生のころの観察日記を思い出してみてください。夏休みの自由研究なんかでやりましたね。
昆虫についての観察日記や植物、食物についての観察日記など、そこにはなにかしらの好奇心があったはずです。日に日に成長していく姿を見たり、キュウリを与えた場合となすびを与えた場合との違いを比べたり、誰もが好奇心を持って観察していたかと思います。日々の観察の中で、新しい発見や驚きもあったはずです。
「うわーまじかー」「え?こうなるの?」みたいなことがあったのではないでしょうか。
人と一緒にするなよと思われるかもしれませんが、取材についても同じことが言えると思っています。
「なにを取材するのか」の「なにを」の部分は、好奇心を持って相手を観察しなければ描ききれない部分です。
この人はどうしてこのように答えたのか、その考えに至った理由はなんなのか、これまでの体験や経験が今の仕事にどのように影響しているのか、本当はこう考えているんじゃないかなど。
相手の思考やことばにできない漠然とした思いをていねいにことばにしてもらうためには、相手をよく観察して、適切な問いを投げかけていく必要があります。
決して尋問するのではなく、相手に敬意を持って「取材」をする。
相手のことをもっと「知ろう」と努力する。
好奇心を持つことで観察する力も高まり、人を描くことができるようになるはずです。
求職者が知りたい情報はそこにあるはずです。
またまた、だいぶ長くなってしまったので話をまとめると、「なぜ取材をするのか」の先に「なにを取材するのか」がある。
取材は情報収集のためではなく「人を描く」ためにおこなうものである。
そして、「人を描く」ためには、取材者が好奇心を持って相手を観察する。
相手に敬意を持って「取材」をする。
ふとした発言に耳を傾けることで、そこから思わぬ方向に話が膨らむなんてこともあります。
その先に求職者が知りたかった情報が眠っているかもしれません。
おわり
取材をおこなう上でのわたしなりの考え方やポイントをお伝えしました。
まだまだ書き足りない部分もあり、ことば足らずな内容になってしまいましたが、取材に関しては正解が一つではなく、人それぞれのスタイルや方法があります。大事なのは常に求職者(読者)の視点を忘れずに、取材相手である先輩社員の魅力を引き出す方法を模索することです。
今回の記事がみなさんのお役に立てれば幸いです。
そして、最後に一つだけお伝えしておきたいことがあります。それは、自社(社内)で取材をおこなう場合です。
自社(社内)での取材においては、雑談に流れてしまうことがあるかもしれません。ときには雑談からいい原稿が生まれることもあり、雑談なくしていい原稿はできないと言っても過言ではありません。とはいえ雑談だけに終始することで、求職者に提供できる情報が不足する可能性もあるので、注意が必要です。
自社(社内)で取材をおこなう際は、雑談に流れすぎないように気をつけましょう。
もし、先輩社員インタビューやその他の取材でお困りの場合、わたしたちがお手伝いをさせていただきます。商品や製品紹介、サービスの取材・原稿作成もおこなっていますので、お気軽にお問い合わせください。